黒い部屋の都市伝説は、怖くて、そして悲しいものでした。 真っ暗に塗りたくられた部屋。 あなたなら何を想像しますか? インテリア 何かの文字で埋め尽くされている ゴキブリ 色だけを […]
黒い部屋の都市伝説は、怖くて、そして悲しいものでした。
真っ暗に塗りたくられた部屋。
あなたなら何を想像しますか?
- インテリア
- 何かの文字で埋め尽くされている
- ゴキブリ
色だけを聞くと、ついつい様々な想像をしてしまいます。
ですが、ときに黒色は、すべてを塗りつぶして隠すときにも用いられます。
そう・・・見てほしくないものを、隠すために。
黒い部屋の都市伝説
これは私の友人Yが幼少期に体験した話です。
Yのおばあさんは遠く離れた山奥に一人で住んでいました。
彼と、Yのお母さんは、高齢で一人暮らしをするおばあさんの様子を気にかけ、時々遊びに訪れていたそうです。
おばあさんはいつもYをかわいがり、本当に優しく接してくれました。
ある一つのことを除いては・・・
「おばあちゃん、あの部屋には何があるの?」
それは、おばあちゃんから絶対に開けてはいけないと言われていた部屋だった。
その部屋のことを聞いた時の祖母の顔は、今でも忘れられない。
いつも温厚な祖母がすごい剣幕で僕を叱った。
「あの部屋には絶対近づいてはいけない!!
そしてあの部屋のことを、二度と聞くな!」
そんなに怒らなくても良いのに・・・
いつも優しいおばあちゃんの変貌ぶりに戸惑いつつ、当時の僕は頷くしか出来ませんでした。
ただ、子供ながらに、
「なぜ開けてはいけないのだろう」
という疑問は、ずっと胸に残っていました。
扉の中身は・・・
それから月日は経ち、僕は中学3年生になりました。
夏休みに母が祖母の家に行くと言うので、僕も一緒に出かけることにしました。
もちろんおばあちゃんに会いたい、というのもありましたが、それ以上に、あの開けてはいけない部屋のことが気になって仕方がなかったのです。
おばあちゃんは久しぶりにきた僕たちを、優しく歓迎し、もてなしてくれました。
その翌日、僕が朝起きると、すでに家には誰もいませんでした。
どうやらおばあちゃんは畑へ、お母さんは買い物に出かけたようです。
僕は
「チャンスだ!」
と思い、近づいてはいけないと言われていたあの部屋へ向かうことにしました。
ギシ、ギシ・・・
ミシ、ミシ・・・
部屋までの廊下は古く、僕が歩くときしみます。
廊下の突き当たりに、例の部屋はありました。
古びたドア。
実際にこの部屋の前まで来るのは初めてでした。
ギー
ドアノブに手をかけて回すと、錆び付いた音がします。
鍵がかかっていると思ったら、意外にも簡単にドアは開いたのです。
「なんだ、真っ暗だな」
最初は電気がついていないから暗いと思ったが、どうやら部屋は真っ黒に塗りつぶされている様子。
でもなぜ?
塗りつぶすならもっと他の色にすればいいのに・・・
何を見た!?
ガラガラ、ピシャ!
玄関の扉が開く音がした。
「やばっ、おばあちゃんかも!?」
と思い扉を閉めようとしたが、すでに時遅し。
祖母はすごい形相でこちらへ走ってきて、今まで見せたこともない、まさしく鬼のような形相で
「何を見た!?言え!何を見た!」
「鍵がかかってただろ!おい、どうやって開けた!?」
と肩を強く掴まれ揺さぶられました。
僕は祖母の尋常ではない感じに恐怖を覚えも、必死で、
「鍵はかかってなかったよ!ドアは開いてた!」
と何度も言ったが、祖母は聞く耳を持ちません。
僕は同じことを言い続けると、祖母はふと我に返ったように、泣きながら自分の部屋にこもってしまいました。
何が何だか分からないまま、僕は一人呆然と立ちすくんでいました。
それから間もなくして母が帰ってきたので、ことの次第を話しました。
すると、母もすごい剣幕で、
「何かみたの?あの部屋で何かみたの?正直に答えなさい!」
と言いました。
母もかなり焦っているようでしたが、それでも祖母よりは落ち着いていたので、
「本当に何も見てない。
黒い壁をみただけ。」
と言うと、聞き入れてくれたようで、母はホッと安堵のため息をついたのです。
「ねぇ、あの部屋なんなの?」
と僕は聞きましたが、母は
「あんたは、知らなくていい」
とうつむいて答えただけでした。
その後、自然と祖母の家に足を運ぶことは少なくなりました・・・
そして、祖母は今年の春亡くなりました。
祖母の家は未だそのまま、あの真っ黒な部屋もまだ、あるようです。
あの時ドアは、開いていた
この話には続きがあるんです。
部屋の真実を知る機会は、突然やってきました。
ある夜、母は家族で写った写真を眺めていました。
映っていたのは祖父母と母、そしてとても綺麗な女性でした。
写真について尋ねると、母はあの部屋のことと一緒に、遂に話してくれたのです。
実は、母には姉がいたのです。
亡くなったことは聞いていましたが、実際に顔を見るのは初めてでした。
あの部屋は、そのお姉さんの部屋だったのです。
お姉さんは村一番の美人だったそうで、そのことが母も、祖母も自慢でした。
ある日、母が夜中に高熱を出し、祖父母は母を病院に連れて行くことになりました。
戸締りをしっかりして、姉に留守を頼んだそうです。
「誰か来ても絶対に開けてはいけないよ」
そう言って祖父母は姉を置いて病院に出かけました。
その夜、姉一人に家に、一人の男性が尋ねてきました。
言いつけがありましたが、
「困っている・・・」
と言う男性を、心優しい姉は放っておくことができず、戸を開けてしまいます。
その男は、家に入ると同時に、姉に襲いかかります。
彼女はなんとか自分の部屋に逃げ込んだのですが、そこで男に襲われ、顔や体をナイフで切り刻まれて命を落としました。
その顔は、美しかった姉とは思えないほど、ひどく醜く、残酷な傷跡だらけだったのです・・・
「でもなぜあの部屋を黒く塗る必要があったの?」
と僕が尋ねると、母はまた語り始めます。
「おじいちゃんはね、あの部屋でお姉ちゃんを見たの」
母が言うには、切り刻まれた姉はひどい姿だったそうで、姉の幽霊を見てとっさに、
「化け物!助けてくれ!!」
と叫んでしまったそうっです。
そして、おじいちゃんは突然その日突然、亡くなってしまいました。
あの部屋で、体中血だらけで…
「後日、おばあちゃんも姉を見たの。あの部屋で。」
おばあちゃんはとっさに姉だと気付いて、抱きしめて泣きました。
すると、姉は
「お母さん、私を一人にしないで。
私はもう、誰にもこんな姿見られたくないの・・・
部屋を黒くしてほしい。
そして、誰もこの部屋には入れないで。」
と言いました。
祖母は姉の希望通り、部屋を黒くして、鍵をかけました。
もう二度と、可愛い娘の悲惨な姿を、他の人に見られることのないように・・・
壁や床に染み付いた血も、入った時にわからないように黒く塗られた部屋。
鍵は、それ以来一度も開けていないそうです。
最後の一言で背筋が凍りついたように感じました。
「え・・・でも・・・鍵はあの日空いていた・・・」
僕は姉のことを思い出したのか、泣きじゃくる母の肩をさすりながら、そんなことを考えていた…
作者は・・・
この作者なのですが、実は誰だかわかっていません。
しかし、都市伝説となってこの話、語り部が居ないと当然伝わることはないですよね。
最初はこの男の子かなと思ったのですが、一つの仮説が思い浮かびました。
それは・・・
お姉さん本人
ではないかと。
自分の無念と、決して誰にも知られたくないという思い。
それらが重なり合い、彼女はこの都市伝説を流した。
自分を傷つけた犯人を一生許さないという怨嗟の念と、もう誰にも自分を見てほしくないという悲しみの思いを込めて・・・
そう考えれば、腑に落ちる部分もあります。
いつか彼女は、黒い部屋から出てくることが、出来るのでしょうか?
考察
「黒い部屋」の都市伝説が伝えたかったことは、
家族愛
かもしれませんね。
どんな姿になっても、どんな状態になっても家族を思いやる気持ちを忘れてはいけない。
そして風化こそが、お姉さんが一番恐れていたことなのではないでしょうか?
「一人にしないで」
とお姉さんが言った言葉は、一人で留守番をしなければ殺されなかったとも取れますが、
「忘れないでほしい。」
「このような事件が、今後二度と起こらないようにしてほしい」
という意味合いもあるのかもしれませんね。
またお姉さんのからみた妹、つまり話し手である「僕」の母親もまた、姉に負けないほど美人だったのではないでしょうか?
妹が同じ目にあってはいけないと、守ったのかもしれません。
しかし、もう一方で鍵を閉めたと言い張る祖母ですが、鍵が開いていたと証言する「僕」
おかしくないですか?
時期は明らかにしていませんが、「僕」が扉を開けてから、祖母が死んだのはそう遠くない日なのかもしれません。
姉が部屋から出てきて、祖母を・・・ということも考えられますよね。
もしかしたら、姉を一人にした祖父母を、彼女はずっと、恨んでいたのかもしれません…
まとめ
都市伝説【黒い部屋】、いかがでしたでしょうか?
祖母の家にある開けてはいけないという部屋は、村一番の美人の姉が顔を切り刻まれ、無残に命を落とした部屋だったのです。
そして、そこで彼女の姿を見て怯えた人は、同じような姿になり、命を落とす・・・
彼女の怨念が、そうさせるのかもしれません。
彼女の願いでもあり、黒く部屋を塗りつぶしたのは祖母、というストーリでした。
作者がわからないので、不透明な部分も多かったですが、お姉さんは
「自分自身の姿を見て親ですら驚かせてしまった。
だからもう、誰にも見せるまいと思い、黒く部屋を塗ってもらった」
と思うと、お姉さんの切ない気持ちを、ついつい汲み取ってしまいます。
今回は、これで終わります・・・
おや?
ガチャリ・・・キー
どうやら、ドアが開いたようです。
「黒く塗ったのはお母さんじゃないの。
これはね・・・血が固まって黒くなったんだよ。
これからは、お父さんもお母さんもみんな一緒。
そしてあなたも・・・」
キー。バタン。